聞いたか薬売り〜!
ちゃん、一緒に居てくれるってさ〜!!
今頃障子の向こうで、いつもの不気味な笑いしてるんだろ?
盗み聞きとか悪趣味だけどな〜。
っていうか、ちゃんの思い、ちゃんと受け止めろよ!
“大切な人”って思ってもらってるんだからな?
そういうの初めてだろ?
…僕らも、初めてだよ…
僕らの主のこと、こんなに想ってくれる人に出会ったの。
僕らのことも、大切にしてくれる人。
薬売りはいっつも、誰かと一緒に歩くことはしなかったからね。
でも、分かるよ。
ちゃんは、きっと、薬売りにとっても大切な人、なんだよね?
違ってるかな…
「あれ、薬売りさん!?」
おうっ!?
入ってくるのかよ!?
「忘れ物を、したもんで」
「え、あの…」
白々しい嘘つきやがって。
「天秤、ですよ」
え、僕かい?
自分で置いてったくせに。
仕方ないなぁ…。
ぴょんと、薬売りの指先に飛び上がる。
何でか、薬売りは僕を見て笑った。
ちょっと気味が悪くて、僕は薬売りの肩に逃げた。
「それから…」
そんなに物忘れが酷いのか、薬売り。
って、あ…、そういうこと。
薬売りは、ちゃんに手を差し出した。
「え、私ですか?」
「たまには、付き合ってくれませんか」
きょとんとするちゃんも、なかなか可愛いなぁ。
「でも、私が一緒じゃ…っ」
薬売りは有無を言わさずに、ちゃんの腕を引っ張った。
たまにはそういうのも、悪くないね。
「客なんて、来なくてもいいんですよ」
薬売りはいつもそんな言い方しかしないんだよな。
遠まわしで、分かりにくい。
ほら、ちゃんも困ってるじゃないか。
ちゃんと言ってあげればいいのに。
薬売りだって、ちゃんに傍に居てもらいたいんだろ?
違うの?
違わないでしょ?
だって、ほら。
あんなに…
-END-
という訳で天秤さん視点でした。
「あんなに…」の後は何でしょうね。
ご想像にお任せして。
2010/5/30