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【弐】




「少し、休んでいきませんか」
「え…でも」


 のんびりしていては、日が暮れてしまう。
 そうすれば、また賊に遭いかねない。


「怪我の手当てを」
「怪我…?」


 薬売りさんは私の左手を引いて、その甲を私に向けた。
 何処かの枝に引っ掛けたのか、かすり傷があった。
 深くはないけれど、血が滲んでいる。


 緊張のあまり、気が付かなかった。
 怪我をしていると分かると、熱を持ってひりひりと痛み出す。

「このくらい平気です」
「これでも一応、薬売りが生業、ですから」

 そう言って薬売りさんは、何故か口角を上げた。





「なっ、に…を…」





 薬売りさんは、私の手の甲に唇を当てると、傷を優しく食んだ。



「く、薬売りさん!?」
「消毒、ですよ」



 知りませんか、と笑う薬売りさん。


「知ってますけど…」


 狼狽えると同時に、顔が熱くなっていくのを感じる。


「だったら、驚く事は、ないでしょう」
「…自分でやるものですよね…」
「そう、ですかね」
「そうですよ」
「俺のほうが、効きますよ」
「…意味が分かりません…」


 確かにそんな気もすると、ぼんやり考えていたら、また…。


「だっ、から…」


 手を引っ込めようとするも、薬売りさんはそれを許さない。


 伏し目がちな薬売りさんが、とても綺麗に見える。


「これで、大丈夫、ですよ」


 意地の悪い笑みを浮かべながら、懐から取り出した薄い手拭を細く裂いて、手に巻いてくれる。




「…ありがとうございます…」




 そうとしか、言い返せなかった。










 薬売りさんがそんなことをしてくれたお陰で…



 傷口は、別な意味の熱を持った。














-END-








何故か分岐してますが
深い意味はありません。
単に二つ思いついただけです。


こちらはちょっと短いです。

薬売りさんが意味不明な行動に出てらっしゃいますが
気にしないで下さい。
「俺のほうが効く」とか
自分で書いたくせに頭可笑しいと思います。


2010/8/8