幕間第二十八巻
〜知っていますよ〜







 貴女も、消えてしまうんじゃあないかと、本気で、思ったんですよ。



 照りつける太陽のせいで、辺りはゆらゆらと揺れて。
 白無垢の花嫁と猫は、ぼんやりと薄れていって。

 それを見送る貴女の姿まで、霞んでいくような錯覚を見た。

 降り注ぐ日の光を気にも留めず、ただひたすらに祈る。
 その姿に、他とは違う何かを感じた。



 消えてくれるなと、思った。



 “何か”の正体が知りたい。
 だから、消えてくれるな、と。
 幻であってくれるな、と。








 すれ違って、幻ではないと安堵した。


 あれから一年。

 それくらい、言われなくても、分かっていますよ。

 けれどまだ、貴女は消えずに俺の傍に在る。

 貴女の姿を見るごとに、安堵する。

 此処に、居るのだと。





 貴女が何を思ってそうしているのか、俺には分からない。

 何を思って、俺と共にこの道を歩いているのか。





 確かに旅に誘ったのは、俺だけれど。

 それを選んだのは、貴女で。







 いつか俺の目の前から、消えてしまうんじゃあないかと。








 そう思うと…
















-END-







二十七巻を受けての薬売りの独白。
「そう思うと…」の後は敢えて無しで。

最近ネタがありません…


2010/10/31
HAPPY HALLOWEEN!