貴女も、消えてしまうんじゃあないかと、本気で、思ったんですよ。
照りつける太陽のせいで、辺りはゆらゆらと揺れて。
白無垢の花嫁と猫は、ぼんやりと薄れていって。
それを見送る貴女の姿まで、霞んでいくような錯覚を見た。
降り注ぐ日の光を気にも留めず、ただひたすらに祈る。
その姿に、他とは違う何かを感じた。
消えてくれるなと、思った。
“何か”の正体が知りたい。
だから、消えてくれるな、と。
幻であってくれるな、と。
すれ違って、幻ではないと安堵した。
あれから一年。
それくらい、言われなくても、分かっていますよ。
けれどまだ、貴女は消えずに俺の傍に在る。
貴女の姿を見るごとに、安堵する。
此処に、居るのだと。
貴女が何を思ってそうしているのか、俺には分からない。
何を思って、俺と共にこの道を歩いているのか。
確かに旅に誘ったのは、俺だけれど。
それを選んだのは、貴女で。
いつか俺の目の前から、消えてしまうんじゃあないかと。
そう思うと…
-END-
二十七巻を受けての薬売りの独白。
「そう思うと…」の後は敢えて無しで。
最近ネタがありません…
2010/10/31
HAPPY HALLOWEEN!