「どういう人、ですか」
薬売りさんの口から出てきたのは、さっきの娘さんたちがするような問い。
そうきたか、と私は答えを考える。
「モノノ怪しか眼中にない人です」
お互いに、挑戦的な笑みになる。
「何をやっている人、ですか」
「薬の行商とモノノ怪斬りです」
「お内儀は」
「居るわけないです。お嫁さんをとっても、夫婦生活はすぐに破綻してしまいます」
「何故」
「それこそ、モノノ怪しか眼中にない人だからです。いつも置いてきぼりで、きっとすぐにお嫁さんに愛想を尽かされてしまいます」
冗談半分、本気も半分。
「では、貴女と、薬売りさんの関係は」
「薬売りと助手。あなた達が期待してるような仲じゃありません」
「そりゃあ、残念」
「ほんとうにっ」
私はニッと笑って、薬売りさんより一歩前に出る。
年頃の娘が傍にいるのに。
しかもその娘が自分を慕ってるなんて思いもせずに。
そうしてその事実を、本人に言わせて突きつける。
なんて期待はずれで、なんて残酷な人だろう。
だけど、それが薬売りさんだ。
そんなこと、もうすっかり慣れてしまった。
薬売りさんに背を向けて、駆ける様にして何歩か進んだ。
べたつく空気が、引き止めるよう。
「さん」
「何ですか」
振り返らずに答える。
「いえ、何でも」
言葉を濁す薬売りさんが珍しかった。
「…早く帰りましょう? 薬売りさん、疲れてるんですから」
「そう、ですね。疲れて、しまいました」
薬売りさんが追いつくのを待って、私達は並んで歩き出した。
「さっきみたいに答えていいですよね…?」
「さっき、というのは」
少しだけ聞きづらかった。
「…薬売りと、助手…」
チラリと、隣に視線を送る。
「好きなように、してください」
あくまでも、私に判断を任せるつもりらしい。
きっと私が、ただの薬売りと助手だとか、恋人だとか、兄妹だとか、主従だとか答えても、薬売りさんには何の影響もないのだ。
痛くも痒くも、嬉しくも残念でも、何でもない。
本当に、残酷な人…。
「じゃあやっぱり、薬売りと助手ですね」
「そりゃあまた、残念」
「残念で結構です。嘘はつけませんから」
そうやって距離を置くのが、一番なんだ―。
-END-
何の解決にもなってません。
ふと、江戸時代で女子会とかあったら
どんな感じだろうと思っただけなんです。
あんまりドラマとかで街娘さん方が何人もで
わいわいって見たことがないし…
でも書き始めたものの、ゴールが見えなくてですね…苦
はっきりしなくて申し訳ないです。
でも割とお気に入り。
2011/6/5