幕間第四十一巻
〜女子会・参〜





「どういう人、ですか」


 薬売りさんの口から出てきたのは、さっきの娘さんたちがするような問い。
 そうきたか、と私は答えを考える。


「モノノ怪しか眼中にない人です」


 お互いに、挑戦的な笑みになる。


「何をやっている人、ですか」
「薬の行商とモノノ怪斬りです」
「お内儀は」
「居るわけないです。お嫁さんをとっても、夫婦生活はすぐに破綻してしまいます」
「何故」
「それこそ、モノノ怪しか眼中にない人だからです。いつも置いてきぼりで、きっとすぐにお嫁さんに愛想を尽かされてしまいます」


 冗談半分、本気も半分。


「では、貴女と、薬売りさんの関係は」
「薬売りと助手。あなた達が期待してるような仲じゃありません」
「そりゃあ、残念」
「ほんとうにっ」


 私はニッと笑って、薬売りさんより一歩前に出る。


 年頃の娘が傍にいるのに。
 しかもその娘が自分を慕ってるなんて思いもせずに。
 そうしてその事実を、本人に言わせて突きつける。

 なんて期待はずれで、なんて残酷な人だろう。

 だけど、それが薬売りさんだ。

 そんなこと、もうすっかり慣れてしまった。



 薬売りさんに背を向けて、駆ける様にして何歩か進んだ。
 べたつく空気が、引き止めるよう。


さん」
「何ですか」


 振り返らずに答える。


「いえ、何でも」


 言葉を濁す薬売りさんが珍しかった。


「…早く帰りましょう? 薬売りさん、疲れてるんですから」
「そう、ですね。疲れて、しまいました」



 薬売りさんが追いつくのを待って、私達は並んで歩き出した。




「さっきみたいに答えていいですよね…?」
「さっき、というのは」

 少しだけ聞きづらかった。

「…薬売りと、助手…」

 チラリと、隣に視線を送る。

「好きなように、してください」

 あくまでも、私に判断を任せるつもりらしい。
 きっと私が、ただの薬売りと助手だとか、恋人だとか、兄妹だとか、主従だとか答えても、薬売りさんには何の影響もないのだ。
 痛くも痒くも、嬉しくも残念でも、何でもない。


 本当に、残酷な人…。



「じゃあやっぱり、薬売りと助手ですね」
「そりゃあまた、残念」
「残念で結構です。嘘はつけませんから」



 そうやって距離を置くのが、一番なんだ―。
















-END-







何の解決にもなってません。

ふと、江戸時代で女子会とかあったら
どんな感じだろうと思っただけなんです。

あんまりドラマとかで街娘さん方が何人もで
わいわいって見たことがないし…

でも書き始めたものの、ゴールが見えなくてですね…苦
はっきりしなくて申し訳ないです。
でも割とお気に入り。

2011/6/5