夜が明け始めた頃、背中の方での声が聞こえた。
それで、俺の厳戒態勢が解かれた。
「…ん…。あ、薬売りさん。おはようございます」
まだ目が覚めきらないらしく、鼻声のまったりと蕩ける様な声だ。
こんな声、薬売りに聞かせていいのか?
「おはよう、ございます」
対して薬売りはいつもと変わらない。
すぐさま返事をした所を見ると、一寸前から起きてたんだな。
で、また寝顔を見てたと。
何か、悪趣味だな。
「…あれ? 帰ってたんですか?」
「えぇ、昨夜遅くに」
“貴女を眺める為ですよ”とかサラっと言える奴だよ、お前は。
「商談相手が、大分悪酔いを、しましてね。店の人に任せて、退散してきたんですよ」
「うわぁ、それは大変でしたね」
しれっと嘘をつくな、嘘を。
「夜が明けきるまで、まだ、間がありますね」
「? そうですね…」
「もう一眠り、しませんか」
「昨夜、遅かったんですもんね」
は小さく微笑んで、薬売りの提案を受け入れた。
そうして何でか二人向き合ったまま目を閉じた。
だ、か、ら。
俺の存在忘れてねぇか!?
もういいだろって、お前居るんだから!
もう一眠りじゃないだろっ!!
俺を皆の所に戻しやがれ〜〜〜〜!!
END
お気の毒様です…
短いので、「参」というより「おまけ」的な感じです。
2013/10/13