幕間第五十八巻







 吃驚した。

 本っっ当に吃驚した。

 だって、薬売りさんに“連れ”だって!

 あの薬売りさんに!!







〜加代・加代の回・壱〜







 アタシは加代。
 黄色い着物が良く似合うことと、肉厚の唇が売りの、今が正に旬! の女の子。
 まだまだ年増じゃないからね。
 前は坂井のお屋敷で働いていたけど、お家騒動でお取り潰しになって、仕事を探して回って、今は海運業の盛んな町のお武家の屋敷で働いてる。

 その町で偶然に再会したのが、あの薬売りさん。

 薬売りさんとは坂井のお屋敷時代に出会った。
 屋敷に出たモノノ怪とかいう化け物を退治して、忽然と姿を消した。

 その後、もう一度出会った。
 ソラリス丸っていう船の上で。
 そこでもモノノ怪を退治して、船が港につくとまたすぐに居なくなった。

 凄く不思議な人。

 超絶美形で、低い声と独特の喋り方。
 派手な着物を違和感なく着こなして、不思議な空気を醸し出していた。

 他人を寄せ付けないっていうか、他人には興味がないみたいに見えた。

 それでも、モノノ怪退治の為なら、誰にでも容赦のない口を利いて、ちょっとだけ色目を使ったりもした。

 アタシもフラッとしたことはあったけど、モノノ怪を退治してしまえばすぐに居なくなる辺り、やっぱり興味のカケラもないんだって分かる。



 そんな薬売りさんに…“連れ”!!



 しかも、凄く可愛い!!



 その子とは、坂井のお屋敷を出るときに出会った。
 屋敷で何があったのか説明すると、妙に納得して、挙句“聞こえた”って言った、これまた不思議な子。

 その子の力が薬売りさんのモノノ怪退治に役立つってことで、一緒に旅を始めたらしいけど…

 そうよね。
 そうなのよね。

 年頃の男女が一緒に居て、行き着くところって言ったら、そうなるわけよね!?




 でもね、あの子だからかな、とも思った。
 これはもう、素直に。


 ちょっと話をしただけでも、その子の芯の強さとか、心根の優しさが伝わってくる。
 素直そうだし、でも負けん気も強そう。

 ただ、天然なのか何なのか、自分が美人さんだということにも、本人が思っている以上に薬売りさんが彼女のことを好きだということにも気付いてないらしい。

 そういう、抜けてる所がとても親しみやすい。

 きっと二人の間で、もっと色んな事があったと思うけど、アタシには充分納得できた。




 薬売りさんがその子に向ける目が、凄く優しくて本当に吃驚。
 薬売りさんの視線は冷たくて鋭いものだと思っていたアタシには、衝撃だった。






 そんな視線を向ける相手だって言うのに、聞いたところによると、その子に“好き”って言ってあげてないっていうじゃない!


 これは放っておけない!!



“アタシに任せておいて!”


 そう言ったからには、即行動!














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タイトルが安易すぎる…


2013/6/9