幕前






 色付き始めた木々が、季節の移り変わりを伝える。
 昼と夜の寒暖の差が大きければ大きいほど、その変化を早めていく。

 ひらりと紅葉の葉が舞う。

 娘はそれを目で追ってから、今度は顔を上げる。
 頭上は木々の葉で覆われて、所々、色を変えている。

「どうか、しましたか」

 娘の数歩先で立ち止まった男が尋ねた。
 もう、聞きなれた独特の喋り方。
 一見すると妖しく、それでいてとても綺麗な男だ。

「もう少ししたら、綺麗な紅葉が見られますね」

 嬉しそうに笑う娘を見て、男も口角を上げた。

「そりゃあ、楽しみだ」

 娘が追いつくのを待ち、並んだ所で二人、歩きだす。






 過ぎていく季節が、こんなにも眩しい事はあっただろうか。

















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2012/1/15